スターダンス→ロマンシア で舞台ウトナ



***「宣告」


 指一本すら触れることを許さずに、ただ一方的な死だけを宣告し、最早諦めの笑顔を浮かべる君をじっと眺めてそれで終わり。かたちを失う君を笑顔で眺めてそれで終わり。
 あっという間にまた冥府と現世に生き別れた僕たちって、なんて滑稽なんだろう。



 ステファニアやローズの制止の声が小さく聞こえたがスターダンスは聞こえぬ振りをした。彼らの言葉を聞いたところで従う気など毛頭ないのだから、聞こえた振りをする必要もないはずだ。殺したいほど憎いと言って憚らないロマンシアに「鉄槌」を下したところでスターダンスを責める者はない。スターダンスは絶対的勝者で、ロマンシアは相対的敗者だからだ。
 崩れ落ちるロマンシアの残骸を目で追って、スターダンスは一人笑みを浮かべる。これまで長いことスターダンスのためだけに生きてきたというのに、労いの言葉一つも聞けやしないで死んでしまうのは可愛そうかななんて他人事のように思いながら。
 あっという間にまた二人は死に別れて、次に会うのはいつか、それとももう永遠に闇の中か、そんなことを思いながら前を見る。新しい時代が到来して、動くべき人間が変わり、スターダンスを取り巻く環境も変わった。それでもスターダンスの心の奥底、ちゃんとロマンシアの場所はある。…それが幸か不幸か、そもそもあまり良いカテゴリーに属していないことは別として。

 鮮血の匂いの立ちこめるその場にさわさわと場違いなそよ風が吹いて、ロマンシアの痕跡を一つ消していく。
 大丈夫だよ、とスターダンスは呟いた。どんなに世界が君を忘れたって、僕だけはしっかり覚えていてあげるから、と。小さな小さな呟きは誰に耳に入ることもなく風の間に吸い込まれて消えていった。


***


 ロマンシアにスターダンス由来の傷が増えていく度、スターダンスは笑いを堪えることに全神経を傾けなくてはならなかった。ざまあみろと嘲笑う気持ちと、分かりやすい嫌がらせと、嬉しいのと、色んな感情が一緒くたになってスターダンスの笑いを誘う。そうやって笑う度ロマンシアが苦虫を噛み潰したような顔をするのも一興だった。
 いつだったか、また増えた傷を撫でながらロマンシアが「どうして消えないんだ」と憮然とした表情をしたことがある。スターダンスはその理由を尤もらしく解説したい気持ちをぐっと押さえ、「さあね」と言った。

 呪いに近い強い思いを込めた刀傷は消えないという迷信がある。スターダンスは自分がロマンシアを傷付ける理由は何かと考えて、結局行き着いた答えに苦笑せざるを得なかった。
 君は僕のものだよという、たったそれだけの主張。子供が積み木に自分の名前を彫るように、いっそロマンシアの体に名でも刻んでしまおうか。


***


 僕は君を魂の一片まで拘束して、自由になることを許しやしない。君が泣いたって何したって自由になることを許さない。認めない。逃れようとどんな手を使っても必ず捉えてみせる。絶対に逃がさない。
 その感情は恋とか愛とかいう生易しいレベルを遠い昔に越えていて、最早執着心以外の何ものでもなかったりする。言うなれば、自分の所有物が自分の意に介さない動きをすることを憎むようなもの。自分の意に介さない動きをするくらいなら止めてしまえと、そういうレベル。

 僕のことを憎んで憎んで、僕のことだけを考えて死ねばいい。魂に消えない傷が付くまで泣いて泣き喚いて僕を憎むといいと思う。
 そうしたら君は永遠に僕のことしか考えないし、君の目に映るのは憎い憎い僕の姿だけ。そして、三度目の生を得たところで君はきっと、必ず、僕の所に戻って来る。その魂の傷を頼りに。その魂の傷だけを頼りに。

 ああ、なんて幸せなんだろう、このループ。ねえ、ロマンシア?


***END



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