***「恋文」


 初めて会った時、正直気に食わない女だと思った。
 言いたいことはずけずけ言うし、そういう点ではオクタビアンにとても良く似ているとすら思った。こんな知り合いは一人で良いと、そう思った。
 それがいつからだろう、君の胸に光る緑の石に心を奪われ、同じように緑に輝く君の髪に触れたいと思うようになったのは。

 これまで培ってきたはずの、途方もない量の知識はあまり役に立たなかった。君はいつも颯爽としていて、俺はいつも翻弄される側。頑張って君に話しかける俺を笑って、くるりと立ち回る君は眩しかった。その時必ず、君の少し短めの髪が日の光を受けてきらりと煌めいて、俺にこんな綺麗な緑がこの世に在ったのかとすら思わせた。世界中どころか宇宙中のいろいろなものを見て回ったのに、それを凌駕する何かが君にはあった。君の前に於いては全てが幼子で、全てが未熟だった。
 君も俺も、そして取り巻く環境も、一般とは言えない。でも俺は、君にそういう意味の特別を感じ取った訳じゃない。あくまでも「君」という存在に憧れたのだ。「君」という崇高で清らかな存在に、俺は心を奪われたんだ。

 エリス、君の名は美しい。君の姿も美しい。そして、君の心は最高に美しい。君のためなら何を投げ打っても構わないと思った。何を代償にしても良いと思った。君さえ残れば、何を失っても怖くはないと思った。君の頼みなら何でも聞けると、そう思っていた――あの時までは。



 時は幾星霜と過ぎ、君は何度も転生して、俺はその度君の姿を宇宙の片隅に探す。
 君の最期の言葉を忘れない。君を殺した己の罪深さも忘れない。この罪の重さは己を潰すほど、だが例え己が潰れようともその度俺は立ち上がることを約束しよう。
 エリス、全ての次元に於いて一番愛おしい君、君が残してくれたものを守るために、君が救ってくれた己の命を全うするために、君の望んだ俺になるために。
 どんなに長い月日を掛けてでも、俺は君のために生きることを約束しよう。――エリス。


***END



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