完成品(色つき)はゲッターさまに差し上げました。
以下、説明不足と思われるこの絵の補足SS。クラホル。



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 魔族の封印に成功したのに、人間は罪深いもので、今度はその内に敵を求め始めてしまった。だから実際のところ、こんなことをしている余裕はないのだけど。クラーリィは思い切ってホルン女王を国外に連れ出した。勿論日帰り、クラーリィの名目は彼女の護衛。本当に、只純粋に、スフォルツェンドから外に出たことがないと宣う彼女に外の景色を見せてあげたかっただけ。誘った言葉は、「外国の状況を一般市民の視線で見てみませんか、一日だけ」という、味気ないものだったのだけど。

 外はそろそろ冬の支度を始めている。舞う枯葉と、頬に冷たい北風とが、一つの季節の終わりを告げる。「一般市民の視点なら一般市民らしい服装を」と言う彼女が用意させたのはごく一般的なワンピース。クラーリィはそんな彼女の隣で歩いても恥ずかしくない服装をと一生懸命考えて、結局無難なコート姿になってしまった。

 きっと大丈夫だ。こんな格好をしていれば、よもやスフォルツェンドの女王と高官などとは誰も考えまい。

「寒くないですか?」
 当日、予想の他空は曇り、気温も低い。ワンピースから覗く素足に吹き付ける北風に敵意すら感じる。少しでも肯定的な返事をしたならば首にかけているマフラーをお裾分けしようと考える。
 クラーリィの掛けた声にホルンは一瞬立ち止まって、それから微笑みと共に小さく「いいえ」と呟いた。

 限られた時間だというのにそぞろ歩き。クラーリィにとっても珍しい行為、ホルンに至っては初めてでは無かろうか。
 それなりに旺盛な町並みをぼんやり眺めて、手作り雑貨を売る屋台に立ち止まったり、足下を走り回る子供たちに目を細めたり。気がつけば日が傾き、そろそろ帰還のことを考えなくてはいけない時間が迫る。来たときに比べ尚のこと寒い北風が気に掛かる。

「平和になったのね」とホルンが呟く。
「ええ、みんな頑張りましたから」とクラーリィが返す。
 並んだ二人、見ている方向は同じようで違う。周りの喧噪が急におさまったような、自分たち二人が孤立したような、そんな感覚。じっと、黙って、お互いの視線のその先を探る。

「寒くないですか?」
 もう一度繰り返したその言葉に、ホルンが同じように立ち止まる。彼女は少し上を向いて考えてから、今度は「ええ、少し」と答えた。ならばとマフラーを差し出すクラーリィの手を払い、ホルンは腕を回してくる。硬直するクラーリィを見上げ、「この方が暖かい」と宣う彼女。ホルンが目を瞑ったのを認め、クラーリィはいろいろ口を挟むのを止める。何か思うところあったのか、少し顔を赤くして、遠く夕暮れる空を眺めて。貴重な一日に別れを告げる。


***END



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