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***リュート編


 最後の最期で見る顔が泣き顔だなんて、いい気がしないね、クラーリィ。
 でもどうか許して欲しい、僕を助けに来た君を傷つけるだけ傷つけて逝くこと、この十五年間自分が救った以上の人を殺した罪を贖わずに逝くことを。

 君は僕の体に魂を戻して、あわよくば生き返らせようと思っていたようだけれども、もし本当に僕が蘇ったとして、君は僕に何て言おうとしていたんだい?第一、僕は十五年前にきっちり心臓が止まっていて、魂と分離されたが故に肉体の腐敗が止まっていただけの話。魂が戻れば砂に還ることなど分かりきっていただろうに。
 君は既に死人である僕に、何を望もうとしていたんだい?

 共に魔族と戦ってくれ?冗談じゃない。もう厭だよ。

 僕は君が羨ましい。君の側にはいつも幼馴染みたちがいて、一緒に戦ってくれたんだろうね。君は孤独を感じたことなんてなかったろう。期待されるという重圧を、その身一つに背負うこともなかったんだろうね。
 君はきっと、僕と同じ職についても、僕と同じ感情を背負わずに済んだのだろうね。

 本当は僕、償う気なんてないんだ。
 サイザーのように償いの機会が残されているわけでもないし、第一僕は…悪くない。僕は十五年という短い人生の全てをスフォルツェンドと世界に捧げた。僕以外に大した戦力のなかったあの時代、徐々に勢力を増す魔族と対抗するために僕は死に物狂いで戦った。僕にプライベートの時間なんてなかった。君みたいに同年代の友達だっていなかった。
 自由を奪われた僕の「身体」が十五年間数え切れない人を殺し、いくつもの村や町を滅ぼしたことは事実だけれど、僕の過去に叙情酌量の余地はあるだろう?収支が合わないとは言わせないよ。
 最後の最期でこれくらいの我が侭、許してくれるだろう?許さないって言ったって、僕は逝くけどね。

 それから、君の友達、殺しちゃって、ごめんね。もし僕が君の思い出どおりの優しい人だったなら、魂だけでも残って君を支えたのだろうけど、生憎僕にその気はないんだ。多分君はこれから先も大神官として頑張るんだろうね。友達も母さんもフルートもいなくなった国に残って、独り大神官として生き続けるんだろう。君は昔っから、そういう子だったからね。
 君は多分、これから先、漸く僕と同じ孤独を味わうんじゃないかと思う。ひとりぼっちで戦う寂しさを、君は漸く知るんじゃないかと。

 こんなあてつけみたいな言い方をして申し訳ないけど、僕は少し嬉しいんだ。君ならきっと…僕の寂しさに気付いてくれるから。綺麗な顔して君たちを置いていった僕の真意に、きっと気付いてくれるから。
 僕の生前ついにひとりも現れなかった理解者に、君はなってくれると思うんだ。

 おやすみクラーリィ、いつだか分からないけど、またね。


***END



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