流血注意とか死にネタ注意とか
それでもってクラ+ホル



























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 ワープするなりくずおれたクラーリィの周りには瞬時に血だまりができた。慌て駆け寄る近衛兵、そしてその奥に目を丸くするホルン。
 すでに意識が朦朧としているらしく、クラーリィは近衛が慌てて救護班を呼びつけるのもお構いなしに、ホルン様、とかすれた声で呟く。
 ホルンは彼に歩み寄った。…駆け寄ることはできなかった。現実は手厳しい。あっという間にこの部屋に充満した鮮血の香りはホルンの感覚すら麻痺させる。

 そばに座り込み、膝の上に彼の頭を載せる。すでに冷たくなりかけている頬の悲しいこと。
 ホルン様、と彼はもう一度呟いた。どうやら目が見えていないらしい。
「大丈夫よ。もうここは安全だから、安心なさい」
 血で汚れた顔をぬぐい、現実を確認する。食い千切られたらしい足からの失血が酷く、今から回復魔法を振るったところで失血多量で死に至るに違いない。下手したら共倒れだ。女王と大神官の共倒れなどたとえ何があっても避けなくてはならない。そう、たとえ、どんなにそうしてあげたくても。
 ホルンの周りをすら、色鮮やかな血が侵食していく。

 待っていられなくなったのかパーカスが救護班をワープさせてきた。しかし抗いようのない現実は彼らにですらどうすることもできない。
 ホルンはさらに酷くなった現状に絶句しているパーカスにぽつり、せめて鎮痛を、と呟いた。

 沈痛な面持ちで黙々と作業をこなす救護班、必死で涙をこらえ肩を振るわせているパーカス、そして黙ってクラーリィの髪をなでるホルン。胸の上下でまだ息のあることだけは分かるものの、それも薬が効いてきたのか徐々に弱くなっていく。
 どうか苦しまずに、と手渡された小瓶。ホルンは少し迷ってからそっと栓を外した。
 一滴。それでいい。

 あなたが悪いのよ、とホルンは微かに呟いた。おそらくその場の誰の耳にも届かなかっただろう。
 あなたが悪い。また無理をしたんだろう、ひとりで突っ走って頑張ってしまったんだろう。そんなに頑張ることを、もう誰も望んでなどいないのに。
 あなたが悪い。私のために、女王のために生きるなんて心に決めてしまったから。そんなに献身されたって、私は悲しくなるばかり。
 挙げ句最期を膝の上でなんて、酔狂としか言いようがない。
 悲しくて仕方なかったけれど、どうしたって涙は出てきてくれなかった。むしろ乾いた笑いが込み上げた。手遅れの一言が、ホルンの胸を圧す。

 いつの間にか胸の上下は止まっていた。



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